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公開講座レポート
Vol.1
「下肢静脈瘤の最新日帰り治療」
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熊本血管外科クリニック院長 宇藤 純一 氏
熊本血管外科クリニック院長
宇藤 純一 氏
異常感じたら早めに受診を
痛み少ないラジオ波療法 昨年6月から保険適用に
下肢静脈瘤は日本人の10人に1人の割合で起きる良性の疾患です。直接命に関わる病気ではありませんが、放置すると皮膚炎や血栓症を生じることもあります。

静脈瘤は血管の中にある逆流防止弁が壊れることで起きます。足の付け根からももの内側を走る大伏在静脈や、膝の裏側からふくらはぎを走る小伏在静脈の弁が壊れやすく、血液が逆流し下肢にうっ血が生じます。その結果、太ももやふくらはぎなどの皮下に静脈瘤ができます。

静脈弁が壊れる原因については、まだ完全には解明されていませんが、立ち仕事の方や、出産経験のある女性に多く発症する傾向があります。また、家族内発生も見られることから、遺伝的な体質も関係しているといわれています。

静脈瘤にはさまざまな重症度があります。診察時には問診、視診、触診に加え、超音波検査が重要です。超音波検査では静脈の大きさや逆流の有無、範囲、程度などを正確に評価することが可能です。
皮膚の下に赤い糸のように見える「クモの巣状静脈瘤」や、青い「網目状静脈瘤」などの軽症例では、特別治療の必要はありません。手術の対象となるのは、だるさ、夜中のこむらがえり、湿疹、色素沈着などのうっ血症状が明らかな重症例です。

根治的な治療法は、弁不全を起こした静脈を取り除く「ストリッピング手術」です。近年の医学の進歩は目覚ましく、カテーテルを使った血管内手術や止血効果の高い局所麻酔が使用できるようになり、入院の必要がない日帰り手術も可能になりました。
下肢静脈瘤発生のメカニズム
下肢静脈瘤発生のメカニズム
2011年には血管内レーザー治療が保険適用になりました。膝の静脈から光ファイバーを血管の中に入れ、レーザー光で不全静脈を焼いてつぶす治療法です。静脈の逆流がなくなるため、ストリッピング手術と同等の効果が得られます。小さな傷で治療ができるのも大きな利点です。

さらに2014年からは、術後の痛みがより少ないラジオ波(高周波)治療が保険適用になり、当院でも1年前からこの治療法を導入しています。手術は1時間弱で終わります。これまでに約400例の患者さんにこの治療を行いましたが、全例で血管の閉塞に成功しています。

現在では約8割の患者さんにおいて、ラジオ波や新型レーザーを用いた血管内治療を実施しています。

医学の進歩により、傷が小さく痛みの少ない根治的な治療が日帰りでできるようになりました。足の静脈瘤が気になる方は早めに専門医を受診されることをお勧めします。
Q&Aコーナー「あなたの疑問にお答えします」
Q1
太ももに紫色の薄い血管が広がっています。膨らみはひどくありません。
立ち仕事なので、むくみ予防効果のある弾性ストッキングをはいて対処していますが、疲れがひどく、痛みがあります。手術の必要はありますか。(49歳・女性)
宇藤氏
静脈瘤は進行する病気ですが、命に関わるものではなく、絶対に手術を受けなければならないというわけではありません。一般に静脈瘤の重症度評価で、血液の逆流が大きく、症状が強い場合には手術を勧められます。私も、特にうっ血症状が強く、日常生活に困り、皮膚炎が起きてしまっている場合は手術を勧めています。立ち仕事などで、毎日つらい思いをされているのであれば、手術を受けたほうがよいでしょう。症状は軽くなると思います。
Q2
左足の静脈に腫れたこぶがあります。内科のかかりつけ医から、こぶが小さいので心配ないといわれていますが、大丈夫でしょうか。(71歳・女性)
宇藤氏
静脈瘤は血栓ができたり、皮膚炎が起きたりすることもあるため、心配ないとは言い切れない病気です。専門医でも、静脈がどの程度傷んでいるかを超音波で検査しなければ、重症度の判定はできません。一度きちんと調べたほうがよいと思います。診察の結果、大したことがなければ安心できますので、血管の超音波診断ができる病院で、ぜひ診察を受けてください。
Q3
5年前に両下肢静脈瘤抜去切除術を受けました。
痛みはありませんが、2~3年前から左足に違和感を覚えるようになりました。
病院を受診したほうがよいか迷っています。(81歳・女性)
宇藤氏
下肢静脈瘤の治療を受けても、ときどき再発することがあります。硬化療法の場合は一時的な効果しかないため再発しやすいですが、抜去切除術というのはストリッピング手術のことですので、再発の危険性はほとんどありません。それでも、中には別の静脈に逆流が生じ、こぶが出てくることはあります。一般的にストリッピング手術後の再発リスクは数年間で1%未満です。心配であれば一度、超音波検査を受けてください。
市民公開講座 採録記事
ずっと健康でいるために 
熊本日日新聞 2015年10月18日

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