Vol.1 病気について ②
Q11:下肢静脈瘤の発症に男女差はありますか?
下肢静脈瘤は女性に多くみられます。
原因としては
■妊娠時にホルモンの影響により静脈が柔らかくなって弁が壊れやすくなるため
■女性の方が筋力が弱く筋ポンプ作用が働きにくい
■肥満傾向がある
などが考えられます。
男性も発症しますが、妊娠・出産がない、筋力が強く皮下脂肪が少ないなどの理由で、発症率は女性の約1/2~1/3ぐらいです。
Q12:下肢静脈瘤になりやすいのはどのような人ですか?
下肢静脈瘤は、
・複数回の出産を経験した女性
・両親とも下肢静脈瘤の人
・長時間の立ち仕事をしている人
に多くみられます。
下肢静脈瘤は遺伝性もあり、両親とも下肢静脈瘤の人は90%以上が下肢静脈瘤になると言われています[
※]。立ち仕事の人は下腿の筋ポンプ作用が働きづらくなるため、重力によって静脈の圧力が高い状態が長時間続き下肢静脈瘤になりやすくなります。
※ Gundersen J, Hauge M. Hereditary factors in venous insufficiency. Angiology. 20: 346-55, 1969
Q13:下肢静脈瘤は遺伝しますか?
遺伝子が関与しているかどうかは明らかになっていません。
しかし、家族に下肢静脈瘤の患者がいると下肢静脈瘤になりやすいことはわかっています。
両親とも下肢静脈瘤だと90%、片親のみだと25〜62%、両親とも下肢静脈瘤でないと20%が下肢静脈瘤を発症すると言われています[
※]。
※ Cornu-Thenard A, Boivin P, Baud J M, et al.: Importance of the familial factor in varicose disease. J Dermatol Surg Oncol 20: 318–326, 1994
Q14:下肢静脈瘤になると、足首から先にも影響がでることがありますか?
足首から先にボコボコとした下肢静脈瘤ができたり、湿疹や色素沈着などの皮膚炎がおきることがあります。
Q15:下肢静脈瘤を放置した場合、どうなりますか?
下肢静脈瘤は良性の病気なので、放置しても命に係わることはありませんが、静脈のボコボコが目立つようになったり、むくみやだるさなどの症状でQOL(生活の質)の低下につながるおそれがあります。
さらに悪化すると湿疹や色素沈着などの
皮膚炎がおきたり、
潰瘍といって皮膚の一部に穴があくことがあります。足を切断するケースはほとんどありません。
Q16:下肢静脈瘤で膨らんだ血管が破裂することはありませんか?
強くぶつけたりすることがあっても下肢静脈瘤で膨らんだ血管が破裂することはありません。
同じ血管が膨らむ病気の「動脈(どうみゃく)瘤」は大きくなると破裂し、命に関わる場合もありますが、下肢静脈瘤ではそのようなケースはありません。
Q17:下肢静脈瘤は自然に治ることがありますか?
下肢静脈瘤はいったん発症すると自然に治ることはありません。
しかし、ごく初期であれば運動をして筋力をつけたり、生活環境を見直すことによって、逆流した弁が戻る可能性はあります。
また、長時間の立ち仕事を避け、適度な運動をしたり、弾性ストッキングを着用すればある程度改善することはできます。
Q18:10代、20代でも下肢静脈瘤は発症しますか?
下肢静脈瘤は遺伝的な要素がある病気ですので、早い人は10代から始まっています。
10代、20代であっても足がむくみやすい場合は、一度専門医を受診されることをお勧めします。
Q19:どの程度血管が浮いて見えたら医療機関を受診するべきなのでしょうか?
血管が浮いて見えるだけで、むくみやだるさなどの症状がなければ急いで医療機関を受診する必要はありません。
心配であったり、症状によって日常生活を送るのがつらい場合は医師に相談してください。
Q20:手の甲や腕の血管がボコボコしているのも静脈瘤でしょうか?
手や腕の静脈瘤はきわめて珍しく、ほとんどの場合は高齢の方やスポーツ選手に見られる静脈の拡張で病気ではありません。
生まれつきあるいは小さい頃から手や腕の血管がボコボコしている場合は、血管腫や静脈性血管瘤という比較的珍しい病気が疑われます。
何らかの症状があったり、急に大きくなってきた場合は医師に相談してください。