専門医に聞く下肢静脈瘤
TOP > 専門医に聞く下肢静脈瘤 > Vol.5 広島逓信病院 放射線室 診療放射線技師 松原 進 先生
皆さんを悩ませている下肢症状が、静脈瘤によるものか調べる検査の中心は、エコー検査です。中心と言いましたが、エコー検査なしで静脈瘤の診断や治療はできないと言っても過言ではありませんので、皆さんが静脈瘤を心配されて受診されますと、必ずエコー検査を行います。
血管(静脈)の検査というと、痛いかどうかが心配になると思いますが、エコー(超音波)検査は痛くありません。
ここでは、このエコー検査について皆さんが不安を抱くことのないようご紹介させていただきます。
1. 下肢静脈瘤のエコー(超音波)検査
エコー検査では、プローブ(超音波の発信と受信を行うセンサーのこと)にゼリーをつけて、皮膚面に軽く当てて検査を行います(図1)。

なじみのあるところでは、おなかや心臓、そして妊娠時に赤ちゃんを観察する検査です。
図1 プローブとゼリー
「下肢静脈瘤について」のページでご紹介しましたように、静脈特有の弁が壊れ(閉鎖不全)、足先の方へ逆流してしまうことが下肢静脈瘤です。
この静脈弁は、エコーで見ますとご覧のように、とても薄く必ず見えるわけではありません(図2)。
図2 画面中央で開いたり閉じたりするのが静脈弁です。
ですので、下肢静脈瘤のエコー検査では、弁が壊れているかどうかに加えて、逆流があるかないかも調べます(図3)。

エコー検査で、この逆流があるか調べるためには、ドプラ効果という現象を用います。
図3 正常な弁と壊れた弁
2. ドプラ効果とは?
日常では、救急車のサイレンの音が、救急車が近づく時は高いのに、通り過ぎると低くなるといった音の周波数が変化する現象です(図4)。
図4
エコー(超音波)検査も、耳に聞こえない高い周波数の超音波を使いますので、このドプラ効果により血液の流れる方向がわかります。ドプラ効果を利用したエコー検査を、超音波ドプラと呼びます。
このドプラ効果は通常のエコー検査では2通りの表現方法があります。

① パルスドプラ
血流の方向と早さがわかります。次項でご紹介いたしますが、逆流の証拠になります。

②カラードプラ
血流のドプラ現象に色をつけます。一般的に前述のプローブに近づく血流を赤く、遠ざかる血流を青く表示させます(図5)。
血管の形状や内腔の状態がわかりやすくなります。
図5 並走する血管もカラードプラ
3. エコーによる静脈瘤の評価
下肢静脈瘤のエコー検査では、壊れた弁によって引き起こされた逆流はパルスドプラで下の(図6)のように表現されます。
図6
正常例(図6左):心臓へ向かう正常な血液の流れのあとに、血液は流れません。
静脈瘤例(図6右):
心臓へ向かう正常な血液の流れのあとに、血液は反対の方へ流れています。この反対方向への血流が逆流です。
この逆流があるかないか調べるために、まず心臓へ向かう正常な血流を起こさなければなりません。そのため、検査の時にふくらはぎを「むぎゅう」と揉みます(図7)。
図7
これは歩いたり足を動かしたりした時に、足の筋肉が血液を心臓へ送り出す流れを起こすことと同じです。
この検査で痛みが起こることはありませんが、ふくらはぎを揉むようになりますので、痛いところがあれば必ず検査前にエコー検査者にお知らせください。
4. 実際の検査方法
当院における実際の検査の流れをご紹介します。
まず、下着の上に検査用の紙パンツをはいていただきます。そして、下肢の静脈を拡張させるために、座るか立つかどちらかでエコー検査を行います(図8)。
主要な表在静脈である大伏在静脈と小伏在静脈を中心に、前述のプローブで観察します。

・大伏在静脈
足首あたりからそけい部(足の付け根)まで観察します。
・小伏在静脈
下腿のうしろ側から膝裏あたりまで観察します。

エコー検査の目的は以下の通りです。

1. 逆流はあるか?
2. どこから逆流が始まっているか?
3. 逆流する静脈はどのような走行か?
4. 逆流する静脈の血管の太さは?
5. 静脈瘤以外に問題はないか?


これらの評価により、治療方針が決定されます。
図8 当院におけるエコー検査の様子
下肢静脈瘤の病態では、膝より下に症状があったりボコボコと大きい静脈瘤が目立ったりすることが多くあります。風船に水を入れるようなもので、膝下の方が膨らみやすいのです。
しかし、実は、そけい部(足の付け根)や膝裏から逆流が始まっているというケースが多いのです。そのため、逆流が始まるところを調べるためには、そけい部まで観察する必要がありますのでご理解をお願いいたします。
おわりに
足が見苦しい、だるい、重い、痒(かゆ)い、痛い、攣(つ)る、むくみを感じるなどといった症状でお悩みをお持ちの方は、ぜひ受診してみてください。
受診されますと必ずエコー検査をいたします。
ボコボコと瘤ができていなくても、静脈弁が壊れており症状のある方はたくさんいらっしゃいますが、エコー検査でわかります。
また、その症状が、血栓によるもの、炎症によるもの、筋肉の損傷によるものなど静脈瘤以外の疾患が原因のことも多く見うけられますが、やはりこれらの疾患もエコー検査でほぼわかります。

以上、静脈瘤エコー検査をご紹介いたしました。
このエコー検査は痛くありません。また、検査を技師が行う施設は多くありますが、技師も研鑽を積みエコー検査を行っておりますので、安心して検査をお受けください。